Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

ほんとうに大切なものは、新しい命を与えて残していく

先日、お茶碗を割ってしまいました。パリンっと、お気に入りだったのに、あっけないものです。

絶妙なタイミングで、この、割れたり欠けたりした器を治す話に出会いました。

 

ほしおさなえさんの『金継ぎの家』

高校生の真緒が、おばあちゃんから器を治す「金継ぎ」の技を習うお話。おばあちゃんが生まれ育ち、漆器と出会った故郷の飛騨高山へ、そして漆を追いかけて茨城県の大子の森へと旅をします。 

金継ぎの家 あたたかなしずくたち (幻冬舎文庫)

壊れても終わりではない

真緒は、おばあちゃんの作業場の棚に並んだ修繕された器はうつくしく、何度ながめても飽きることがないと言います。

仕上げが終わると、器はびっくりするほどうつくしくなる。わたしはその器のもとの姿を知らないけれど、傷自体が一つの模様みたいになって、それがその器のあたらしい姿なのだ、と思う。

『金継ぎの家』のカバーイラストに、金継ぎの魅力がよく表れています。奥側のイラストは、ストーリーに出てくる、おばあちゃんの古くからの友人、君枝さんの思い出のカフェオレボウルですね。ピンク色のボウルに、空色で継がれた割れ目が良く映えています。壊れる前に持っていたであろう、ピンク一色の可愛らしい雰囲気とは異なる洒落た味わいが感じられます。

器の修繕方法にもさまざまあって、繕いの跡を残すか、目立たせないか。残すなら、何色を使うかで、まったく異なる仕上がりになります。

漆器は壊れても、それで終わりではありません。修繕することで、寿命が延びるというよりも、新しい命が吹き込まれるようです。

 

ほんとうに大切なものを残していく

真緒とおばあちゃんの漆を追いかける旅では、漆器や漆産業のすう勢が分かります。

おばあちゃんが子どもの頃は、たくさんの職人さんが漆器の工程ごとに分業して作られていましたが、工業製品が増えるにしたがって、衰退していきました。そんな中で、昔ながらの漆器の良さを残したいと考える人たちが、全ての工程を担うことで再興を計っています。

美しい漆器、修繕しながら新しい味わいを楽しむ伝統を取り戻す道を進んでいることが分かって嬉しいけれど、それで良かった良かったという単純なものではありません。

漆は、栽培から伐採まで一貫した管理が必要で、木を植えてから取れるまでに十年かかります。世代を超えて取り組まなければ実現しません。

漆器の修繕は、漆で継ぎ乾かす作業を繰り返すために、引き受けてから数ヶ月かかります。時間をかけて、費用をかけて、やっとかなうことなのです。

それでも、直しながら使い続けるという選択肢があることが嬉しい。ほんとうに大切なものを残していくことができますから。 

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。