あなたの家には、ガラクタがありますか。
ガラクタのクタは、ゴミやクズを意味する芥(あくた)が語源だそうですが、捨てそびれたのではなく、捨てるに捨てられないガラクタもあるのではないでしょうか。
きょうは、ガラクタをテーマに紹介します。
谷瑞恵さんの『がらくた屋と月の夜話』
つき子は道に迷って入り込んだ公園で、ガラクタの露店を開いている風変わりな老人と出会います。老人が売っているのはモノではなく物語だと言います。
タイムテーブル、白い糸の美しいレース、見事な彫刻が施された椅子など。つき子はガラクタが語った物語が新しい持ち主を勇気づけるのを目撃します。
ガラクタは、温もりのある想像を駆り立てる
『がらくた屋と月の夜話』は、つき子が フランス語で「楽しいガラクタ」と意味するブロカントの世界を知るところから始まります。
(ブロカントのお店は)昔の雑貨とか、使い古したものなんかを扱ってて、美術品みたいな価値はない量産品ばかりなんですけど、新品にはない味わいがあったり、前の持ち主の痕跡があったり、眺めるだけでも楽しくてわくわくするんです
そういえば、SL(蒸気機関車)のコレクター の間では、ピカピカに磨き上げられたナンバープレートよりも、引退当時のまま土埃をかぶって汚れた状態のものの方が価値があると聞いたことがあります。
SLコレクターがナンバープレートを眺めながらSLの現役時代に想いを馳せたとき、プレートについた土埃から、モクモクと蒸気を噴き上げて走る姿が浮かび上がってくるのでしょうね。
『がらくた屋と月の夜話』の第一話に登場する古いタイムテーブル(時刻表)なども、折り目や書き込みから、前の持ち主の旅を感じ取ることができます。
もちろん、新品の時刻表からも想像は広がっていくけれど、それはコレを持ってどこを旅しようといった未来の自分につながっていくものです。
人の手を経た古いものからは、人の温もりある想像が駆り立てられます。
青柳碧人さんの『ほしがり探偵ユリオ』シリーズ
深町さくらは、失業して兄のユリオが暮らすマンションの居候になります。ユリオはガラクタを収集する趣味が高じて、ガラクタ通販サイト「ほしがり堂」を運営しています。
さくらがユリオの運転手にされて、ガラクタ集めの手伝いに駆り出された先には、なぜかいつも死体が現れ、ユリオは目当ての品を手に入れるために名推理を働かせることになります。
ガラクタをこよなく愛する名探偵ユリオが活躍するミステリ短編集です。
モノは大事にするほど、物語を深めていく
なんでも欲しがるユリオは、非常に博識で集めたガラクタのことになると、長々とウンチクを語りだします。
そう、モノは、そもそも生み出されるに至って、物語を背負っています。そしてさらに、使われる中で持ち主の想いや経験を積み重ねて、唯一無二の味わいを得ていきます。
『がらくた屋と月の夜話』のつき子は、ガラクタ屋の老人によるガラクタが語った物語を聞いているうちに、価値観が変わりそうだと言い出します。
ものって、人がだいじにするほど価値が増すんでしょうか。それも、だいじに保存するんじゃなくて、使えば使うほど、物語が深くなるって感じ
思うに、モノの価値が分かるというのは、モノが抱えている物語に興味を持ったり、共感をおぼえたりすることをいいます。
あなたのガラクタには、どんな物語がありますか。
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