Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

食べつくす、命を無駄にしないために。

人間が自然に近づいたことが、未知のウィルスの人間界への侵入を招いているのだと聞きました。

なるほど、森を切り開き、太陽の光が届かない深海にもぐれるようになって、人間の世界は拡大していますが、街で暮らしていると、むしろ自然から遠のいているような気がします。

きょうは、食料を仕留める話を紹介します。私たちが自然とつながっていることを感じられます。

 

梶尾真治さんの『波に座る男たち』

ヤクザの大場会は、収入源となるシノギが確保できず、存続の危機にあります。昔気質の親分は、シャブや売春は認めません。そんなとき、不良債権の取り立てで、借金のカタに捕鯨船とクジラの鍋料理の上手な料理人を手に入れます。

大場会は、日本の食文化の伝統を守ろうと、クジラ捕りに乗り出しますが、台湾マフィアや過激な環境保護団体と衝突してしまいます――――――。 

波に座る男たち (講談社文庫)

波に座る男たち (講談社文庫)

  • 作者:梶尾 真治
  • 発売日: 2009/09/15
  • メディア: 文庫
 

  

捕鯨を続ける正当な理由はなにか

野生動物を仕留める話には、環境保護団体との摩擦がつきものです。 

ヤクザの親分は、捕鯨を止めろと主張する環境保護団体と対面したときに、こんなに美味いものを諦めることはできないと、うそぶきます。

環境保護団体はこんな主張を認めませんが、やがてクジラに別の使途があることを知って、心を動かします。

その使途によって、捕鯨は良いことになったり、悪いことになったりするのでしょうか。

 

近藤史恵さんの『みかんとひよどり』

ジビエ・レストランのシェフ 潮田は、食材にこだわって自ら狩猟に出かけて遭難、プロの猟師の大高に助けられます。大高の山小屋で、仕留められた鹿が手際よく解体される様子を目の当たりにし、絶妙な火加減の猪肉をごちそうになり、潮田の料理への情熱が駆り立てられます。

ジビエを通じて結ばれた料理人と猟師の友情を描きます。 

みかんとひよどり (角川書店単行本)

みかんとひよどり (角川書店単行本)

 

 

野生動物を狩るのは必要悪かもしれない

鹿は鹿として、ただ生きているだけだ。有害など度呼ばれる理由はない。

だが、(鹿にかじられて)樹皮を剥がされた多くの樹を思い出す。あれば誰かが生きる糧を得るために植えた樹だ。そして僕たちの生活は木材を必要とし、畑で取れる作物を必要としている。

心優しい人は、野生の鳥獣が駆られることに抵抗を感じます。

けれど、増えすぎた野生の鳥獣は、畑を荒らし森を破壊します。適正な数量に管理しなければなりません。

私たちの暮らしを守るために、必要悪として殺すという選択もあります。

 

殺した命は無駄にしない、食べつくす、使いつくす 

増えた鹿は駆除しなければ、里にも下りてくる。食物がなくなって飢え死にする鹿もでる。鹿や猪を殺しながら、肉はスーパーで買うのか?

大高の猟に同行した潮田は、雪の上に血だまりを残し息絶えている鹿を目の当たりにし、目を背けたくなるのを「ぼくはジビエを調理して、多くの人に提供する仕事をしている。目をそらしてはならない」と踏みとどまります。

命は尊いもの。理由は何であれ、命を奪った事実から目を背けてはなりません。

潮田は、レストランのオーナーに連れられて害獣の焼却施設を訪れます。そこには、年間で三千頭以上もの鹿と猪が持ち込まれ、殺処分されています。

最近は、せっかく作った食べものが破棄されるフードロスが問題と報じられていますが、食べものになる前の命が無駄にされいるのです。

狩猟は、食べ物を得る手段として考えたら、必ず獲れる保証がなく効率が悪い。けれど、殺したからには、無駄を出さずに食べつくす、余すところなく使いつくす。それが命を奪った人間の務めです。

 

【こちらの記事もどうぞ!】 

bookinlife.hatenablog.com

bookinlife.hatenablog.com

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。