Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

何があっても、平気で生きていく

あなたは、家族に秘密がありますか。

家族の秘密が発覚すると、いったい何を見ていたのだろうと戸惑ったり、裏切られたと憤りを感じたり。良く知っていると思い込んでいる相手であるだけに、ショックは大きいものです。

きょうは、家族の死の後で、秘密が明かされる話を紹介します。

 

小路幸也さんの『三兄弟の僕らは』

稲野家は、父、母、男三兄弟の五人家族。典型的な中流家庭で、仲良く穏やかに暮らしていました。長男が大学三年の夏、交通事故で父と母ふたりが亡くなったことをきっかけに、父と母の秘密が明るみになります。

僕たち家族が、こんな複雑な事情を抱えていたなんて! 

三兄弟の僕らは

三兄弟の僕らは

 

 

内館牧子さんの『すぐ死ぬんだから』

78歳になるハナは、若くて美しいと褒められるのが大好き。「死ぬまで絶対にバアサンくさくならない」とお洒落に余念がなく、夫の岩造から「お前と結婚したことが、人生で一番よかったよ」と言われては得意になっています。

しかし、岩造が突然倒れて亡くなると、すっかり気力がなくなります。さらに、岩造の遺書が見つかり、数十年隠されてきた驚きの秘密が明かされます。 

あの夫に、こんな素顔があったなんて!

すぐ死ぬんだから

すぐ死ぬんだから

  • 作者:内館 牧子
  • 発売日: 2018/08/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

故人を問いただすことはできない

『三兄弟の僕らは』の稲野家三兄弟と『すぐ死ぬんだから』のハナは、身近な家族を突然に失い、そして家族の秘密を知るという経験をします。

『三兄弟の僕らは』では、兄弟がまだ学生であることから、いずれ時期をみて話すつもりだったのではという推測が出てきますが、真相は分かりません。

故人は、どうしてと問いただすことも、怒りをぶつけることもできません。

秘密の真相は闇のまま。でも、もはや故人が関わらないのだから、秘密をどう扱うかは、遺された者がいいように決めればよいのです。

 

自分の人生は自分のもの

稲野家三兄弟は、実に見事な結論を出します。あっぱれすぎて、いかにもお話の世界な感じなのですが、次のハナのセリフを考えると、現実でもありという気がしてきました。

人間関係って、最初は泣いたり恨んだり、やり返したりしますけど、自分の人生だから自分がいいようにすると腹をくくると、覚悟ができますよね。(中略)

これからは私も、自分が思うように生きます。
どうせ死ぬ身ですが、だからこそですよ

「どうせ死ぬ身」つまり、残りの人生は限られているのだから、どうでもいいと諦めている言葉ですが、限られた人生だからこそ、笑顔で楽しく過ごしたいもの。

誰かを憎んだり、恨んだりしていては、楽しい気分ではいられません。

そう考えたら、誰かのためではなくて、自分のために、あっぱれ寛容な行動を選ぶことになる気がします。

 

平気で生きて居る

ハナが夫の座右の銘である「平気で生きて居る」について、こんなことを言っています。

誰かを励ます時って、『前向きに生きよ』ってすぐ言うじゃない。
あの言葉で元気出る人、いないよ

だけど、(中略)

『平気で生きよっと!』って自分に言うと、元気が出るってほどじゃないけど、死ぬのはやめようくらいは思うんだよね

最初はピンとこなかったけれど、この一節を含む正岡子規の文章を読んだら、実に奥深い言葉に思えてきました。

余は今まで、禅宗のいわゆる悟りということを誤解していた。
悟りという事は、いかなる場合にも平気で死ぬる事かと 思っていたのは間違いで、 いかなる場合にも平気で生きる事であった

正岡子規「病牀六尺」)

力の限り頑張って「あぁ、やり残すことはない、いつ死んでも悔いはない」、そんな境地に達せたら素晴らしいけれど、何があっても動じずに人生を楽しめたなら、さらに素晴らしい。

最愛の伴侶を失っても、
信じがたい秘密を突き付けられても、
まさかの裏切りにあっても、平気で生きればいいのです。

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。