Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

空を見上げたら、何を感じますか。何が見えますか。

あなたは最近、空を見上げましたか。

空の色、雲のカタチ。景色は常に変化しています。空や景色の変化に目が向くかどうかは、心の余裕具合と関係がある気がします。

きょうは、自然とつながる力のお話を紹介します。 

 

森絵都さんの『カザアナ』

観光立国という国家戦略の下、日本的なものが優遇、強化されている近未来。国民は、日常的にセンサーやドローンで監視され、窮屈な生活を余儀なくされています。

そこに、空を読み、虫を操り、石の声を聴く特別な能力を持つ「カザアナ」が登場し、息苦しい世界が開かれていきます。 

カザアナ

カザアナ

 

近代文明を象徴するAI(人工知能)が浸透している世界に現れた、古来から伝わる自然を読む力を持つカザアナ。この対照的なふたつが並ぶ違和感が、私たちが便利さと引き換えに失いつつあるものに気づかせてくれます。

小学生の少年、早久が、学校を連日休んでいる友だちを気にする場面が出てきます。早久は、家庭教師のAIから「友だちの家庭の問題に踏み込むべきではない」とアドバイスされて、身動きが取れなくなります。ヤキモキしていると、カザアナにこんなことを言われます。

(AIが保有している)膨大な過去のデータには、まだ早久も次郎(学校を休んでいる友だち)も入ってないよね。今、ここにいる早久は、ここにしかいないたった一人の早久じゃないの。次郎だって、たった一人の次郎なんじゃないの

膨大なデータは一般的な姿を映し出すけれど、それは確率であって、絶対ではありません。見ず知らずの人から言われるのは嫌でも、親しい友だちからなら、大切に気遣う想いが伝わって嬉しいこともあります。

空の青さが毎日違うように、私たちはひとりひとり違いますから、データ分析では上手くいきません。 

 

川端裕人さんの『雲の王』

美晴は、気象台に勤め、小学生の息子と暮らしています。ある日、謎の手紙に導かれて亡き両親の郷を訪ね、天候を観る力を持つ雲族の一員であることを知ります。

幼い頃に、お天気の仕事をしようと心に決めた美晴が、天候を観る力を開花させ、使命について考える話。 

雲の王 (集英社文庫)

雲の王 (集英社文庫)

 

面白いことに、幼い頃から天候に関心がある美晴ですが、天候を観る力に目覚めて素晴らしいとはなりません。観測機器やコンピュータの能力が上がっているから役割はないと考えます。

では、現代では無用な能力なのかというと、そうでもないようです。

雲が離散し、埋もれること。それは、根を張ることではないか。
土の中にしっかりと、ではなくても、せめてそれぞれの宿り木から、地面に向けて、気根を垂らすように。

いま明らかにコレに役に立つと言えなくとも、力はそこにあって、あり続けて、将来、必要とされるときに備えています。

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。