Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

だれも、だれかの代わりにはなれない

あなたは「自分の代わりはいくらでもいる」あるいは「自分は誰かの代わりに過ぎない」という想いを抱くことがありますか。

私たちはみんな、自分を、他の誰でもない自分を認めて欲しいと願っています。

きょうは、身代わりをキーワードにアイデンティティを考えます。

 

岡崎琢磨さんの『珈琲店タレーランの事件簿5 この鴛鴦茶がおいしくなりますように』

珈琲店タレーランの常連客アオヤマは、中学時代の憧れのお姉さん、眞子と11年ぶりに偶然の再会を果たします。眞子はアオヤマが理想のコーヒーを追い求めるきっかけになった人物。アオヤマは、悩みを抱えている様子の眞子を元気づけようと珈琲店タレーランに誘います。

バリスタ美星が、アオヤマと眞子の過去と現在、京都の舞台にふさわしい源氏物語が絡み合うミステリを解き明かします! 

珈琲店タレーランの事件簿5』には、別れた恋人が忘れられない男女が登場します。別れた恋人の代わりを追い求めてしまう。愛する人はかつての恋人のことを忘れられず、自分は身代わりに過ぎない。

悲しい行き詰まりを嘆く場面で、美星は身代わりと感じる苦しみを形代に託して流してみせます。

自分は身代わりに過ぎないと言うのに対して、そんなことはないと否定するのは簡単ですが、深く思い詰めている人の心には響きません。

どうしても身代わりという考えから離れられないときは、それを捨て去る、目に見える行動を取ることが、きっと気持ちを切り替える助けになります。

 

ほしのさなえさんの『活版印刷 三日月堂 星たちの栞』

川越にある古い印刷所 「三日月堂」。そこは活版印刷のお店で、お客さんの作りたい形を一緒に探してくれます。昔ながらの活版印刷の温かみのある風合いに惹かれて、人が集まり、作りたい形が見つかったとき、心のしこりや引っ掛かりがほどけていることに気づきます。心温まる4つの短編集です。 

自分に自信が持てなくて居心地の悪さを感じている人たちが『活版印刷 三日月堂』を訪れます。

珈琲店「桐一葉」の若き店主、岡野くんもそのひとり。伯父から店を継いだものの、自分は伯父の代わりに過ぎず、そして伯父にはかなわないと思っています。

日月堂の店主の弓子さんは、「だれも、だれかの代わりになんて、なれませんよ」と言います。そしてショップカードを作りたいけれど、どんなカードが良いか分からないという岡野くんに、こう聞きます。

言葉にできなくても、なにかしらイメージはあると思うんです。
たとえば、『これがいい』というのは言えなくても、
『これはちょっと違う』っていうのはあるでしょう?

目の前から違うと感じるものを除いて、残ったものから、 自分の中にあるイメージが少しずつ見えてきます。

「自分らしさ」「個性」を打ち出すというと、何か他の人と決定的に異なるもの、斬新なものを思い浮かべてしまうけれど、目新しくある必要はないのです。どの紙にどのインキで刷るか。何を選んで何と組み合わせるか。そこに、その人らしさが表れます。  

素敵なお店ですけど、素敵であり続けるには、
ちょっとずつ更新しなくちゃいけないのかもしれませんね

いま素敵だと感じるものは、時が経つうちに古臭く陳腐になっていきます。

別のものを組み合わせることで、次の時代も素敵だと思えるものができます。今までの名残があるから続いている気がするけれど、それは新しいもの。何かを受継ぐということは、物真似ではすみません。

だれも、誰かの代わりにはなれないし、代わりになる必要もありません。私たちは過去を受継いで、新たに続けていくのです。

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。