Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

「勝つ覚悟」がありますか

あなたは勝つのが好きですか。たとえ、暇つぶしのジャンケンだって勝てばうれしいですものね。

でも、ただ勝てばいい、勝てばハッピーというものではないようですよ。

 

近藤史恵さんの『キアズマ』

大学生になった正樹は、自転車部から強い勧誘を受けて入部したのをきっかけに、ロードレースにのめり込んでいきます。どこまで行けるか試してみたい。メキメキと力をつけ、すっかり夢中になったところで、ロードレースは楽しいことばかりではないことに気づきます。他人を傷つける可能性のあるスポーツはしないつもりだったのに。中学の時のつらい思い出がよみがえります。正樹はどんな決断をするのでしょうか。

キアズマ (新潮文庫)

 

正樹は、とくにやりたいとも思わずにロードレースを始め、たまたまロードレースの素質があって、初心者とは思えない好成績を打ち出します。本人は特別なことをしている意識がないので、昨日まで親しくしてくれた先輩から急にライバル視されて、戸惑います。

「運がよかっただけ」という正樹に、自転車部の部長、村上は、こう諭します。

覚えとけよ。運悪く、強い選手が負けることはある。

でも、運がいいだけで弱い選手が勝つことなんかない。

勝利の陰には、敗北の悔し涙があることを考えたら、「たまたま運が良かった」というのは謙虚よりも不遜に聞こえます。

 

正樹の友だちは、中学の時に事故で障害を負っています。それ以来、少しでも視野他人を傷つけることを避けたい、安全とは言い切れないスポーツをするなんてあり得ないと考えてきたのですが、ふと気がつきます。

どうやっても死や事故はついてまわる。

自分が死なない限り、逃げられるわけではない。 

勝利は、事故の可能性に向き合い、乗り越えたところにあります。

 

勝ちたいとおもうなら、覚悟を決めなければなりません。勝つまでの道のりにあるものを乗り越える覚悟。勝った先にあるものを受け止める覚悟を。 

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。