Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

「家族の絆」という幻想

あなたは「家族」という言葉をきいて、何を思い浮かべますか。

仲良し家族だという人も、そうでない人も、血縁や婚姻関係を示すと同時に「家族」 という言葉が「親しい」とか「大切」という意味で使われていることにお気づきでしょう。仲が悪くて、いがみ合っている家族がいくらでもあるのに不思議なことです。

きょうは、家族の絆という幻想をテーマに紹介します。

 

大沼紀子さんの『空ちゃんの幸せな食卓』

空とお姉ちゃんは、ママが交通事故で亡くなって、それまで離れ離れだったパパの家に引っ越しますが、パパは仕事で留守。パパの新しいお嫁さんとの3人暮らしが始まります。

血のつながらない家族の心温まるストーリー3編。 

([お]7-5)空ちゃんの幸せな食卓 (ポプラ文庫 日本文学)

([お]7-5)空ちゃんの幸せな食卓 (ポプラ文庫 日本文学)

 

空ちゃんの義母になったモコチンは、「血の繋がってない子供なんて、本当に愛してやることなんて出来ないんだから」と言われたのに対して、こう返します。

血が繋がってないあの子たちだから、愛せるような気がしてるんです。
あたし、こんなふうですから。自分のこと、あんまり好きじゃないんですよ。大事だとも思えないし。だから自分の子供って、あんまり欲しくない。自分に似た子供なんて、ちゃんと好きになってやる自信ないし。

このセリフで血縁にこだわる人が多い理由が分かった気がします。私たちは、自分に似ているから家族に親しみを抱くのです。でもまた同時に、自分に似ているから憎しみを抱くという感情の流れもあります。

血縁の先に「家族の絆」があるというのは幻想に過ぎません。 

 

宮部みゆきさんの「R.P.G.」

住宅の建築現場で男性の刺殺死体が見つかります。警察の捜査で、この男性にはネット上の家族がいて「お父さん」「お母さん」「カズミ」「ミノル」と呼び合い、頻繁にメールをやり取りし、チャットで会話していることが分かります。

実在の妻と娘がいるというのに、何のために家族ごっこをしているのか。殺害されたことにはつながりがあるのか。事件の謎に刑事が迫っていくミステリ。 

R.P.G. (集英社文庫)

R.P.G. (集英社文庫)

 

 ネット上ので「お父さん」「お母さん」「カズミ」「ミノル」と呼びあう4人。現実の家族では心が満たされないから、家族ごっこをしています。

あたしたち、みんな寂しいの。現実の生活の中じゃ、どうやっても本当の自分をわかってもらうことができなくて、自分でも本当の自分がどこにいるかわかんなくなっちゃって、孤独なのよ、心のつながりが欲しい。

仲の悪い家族の話はいくらでもあって、まさに自分がその当人であってさえも、理想的な「家族の絆」を諦めきれません。なぜなら、理想と現実のギャップが大きければ大きいほど、心が求める癒しとなるのが「家族の絆」だから。

 親子にも相性があり、人間的に相容れなければ、血の絆も呪縛になるだけだということだ。 

互いを思い合う「家族の絆」という幻想は、あまりに甘美であるがゆえに、手に入れられない苦しみも大きくなります。

  

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。