Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

信じるところから始まります

 あなたは、河童を見たことがありますか。妖怪や幽霊、妖精。見たことがないなら、いないってことなのでしょうか。

きょうは、妖怪の存在をテーマに紹介します。

 

椰月美智子さんの『消えてなくなっても』

タウン誌の編集者、水野あおのは、ヒーリング特集記事のために河童山にあるキシダ治療院を訪れます。そこは、地元ではどんな体の不調もたちどころに治すと評判で、強いストレスを抱えていたあおのは、居候しながら静養することにします。

岸田先生には不思議な力があって、鍼灸とマッサージと「気」で身体の不調をたちどころに治すだけでなく、妖怪や幽霊が見えると言います。初めは半信半疑だったあおいですが、治療室に得体の知れない黒い空気がうごめくのを目の当たりにした翌日、庭先に河童がいるのを見つけます。 

消えてなくなっても (幽ブックス)

消えてなくなっても (幽ブックス)

 

あおいは、キシダ治療院で不思議なことを見聞きして、目に見えない世界があることをひしひしと感じるようになるにつれて、ストレスから解放されていきます。

 (目に見えない世界が存在することを)認めるのと認めないのでは、世界の見え方がまるで違うはずだ。 

「ない」と否定していると心が固くなっていきます。「あるかも」とおもったら、心が解放されて楽になります。

 

荻原浩さんの『逢魔が時に会いましょう』

金欠の大学生、高橋真矢は、民族学の布目准教授のフィールドワークを手伝うアルバイトをします。遠野へ座敷わらしの撮影に、山梨と静岡の県境へ河童を探しに、霧北へ天狗の正体を探りに。妖怪の正体に迫る3つの連作短編です。 

逢魔が時に会いましょう (集英社文庫)

逢魔が時に会いましょう (集英社文庫)

 

布目准教授は、妖怪の伝承が生まれた背景、例えば河童はカワウソなどの動物を見誤って錯覚や妄想を招いた説、カッパという語源から泳いでいる剃髪の宣教師説などを披露、解説してくれますが、妖怪はいないという結論は出しません。

この目で確かめてもいないに、頭から否定するのは正しいのだろうかって。先入観は進歩や発見を止めてしまう。地球が太陽の周りを回っていることも、人間がサルから進化したことも、昔は人を惑わす悪しき考えだとして糾弾されていたことを、僕ら研究者は忘れちゃいけないと思うんだ

そして、妖怪が見つからなかったらどうするのかと問われると、こう答えます。

現代の妖怪やもののけと呼ばれている存在は、みんなそう(人前に姿を現す気がないんだろう) なのかもしれない。誰も信じなければ、出現する意味がないからね。(中略)

信じる人間がいれば、その数だけ、妖怪はきっとまだたくさん存在している

信じるところから始まる世界、信じることで広がる世界があります。 

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。