Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

親から才能を受継いでも、夢は受け継がない

名スポーツ選手の子供が将来有望なスポーツ選手の卵と聞くと、やっぱりなぁ、うらやましいなぁって思いますよね。

才能の遺伝が科学的にキッチリ説明されていなくても、カエルの子はカエルの子と誰もが気がついています。でも当人にすると、そこに受け入れがたい想いを抱くようです。  

 

東野圭吾さんの『カッコウの卵は誰のもの』

父娘ともにスキープレイヤーの緋田宏昌、風美は、スポーツ科学の研究者から遺伝子を調べさせてほしいと頼まれます。スポーツ遺伝子の遺伝による優位性、カエルの子はカエル説を科学的に証明したいというのです。

宏昌には誰にも知られたくない秘密があって、娘が注目を浴びるのを阻止したいのですが、娘はトップ選手になりつつあり、すべてが明らかになるのは時間の問題。もはやこれまで、宏昌が覚悟を決めた頃、風美に試合を辞退させろという脅迫状が届きます。

どうすることが娘のためになるのか、宏昌がとった行動とは何だったでしょうか。

カッコウの卵は誰のもの (光文社文庫)

元オリンピック・スキー選手の緋田宏昌には、3つの夢があります。1つ目はオリンピックで表彰にあがること、2つ目は長く第一線で活躍すること、3つ目は子供がオリンピックの表彰台に立つこと。

スポーツ選手にありがちな夢ではありますが、子供が成長して現実味を帯びてくると、聞き流すことはできません。

緋田風美は「お父さんの才能をどれほど自分が受継いでいるかを知りたくないか」と聞かれて、「思いません」とキッパリ答えます。 

父は父。あたしはあたしだからです。あたしは、今の自分が持っているものは、全部練習で手に入れたと思っています。生まれつき持っていたものなんて、何ひとつありません。

父親を好きか、尊敬しているかは関係ありません。カエルの子はカエルの子と薄々気づいているからこそ、アイデンティティーを守るために、自分の実力が努力ではなく遺伝に基づいているとは認めるわけにはいかないのです。

風美の後輩で、遺伝的な身体能力が認められてスカウトされた少年は「健康だし、素質だってある。感謝しなきゃな」と言われたときに「感謝?誰に?」と心の中で呟きます。

この少年が興味を持っていたのは、スキーではなくギターでした。好きでやっていることに素質があると言われたら嬉しいけれど、興味のないことに適性があると言われても感激はしません。

三者は、恵まれた才能があるのなら、その才能を活かさないともったいないと考えます。その根底には、その才能を活かす方向に進むという選択が既にされていることに気づく必要があります。

親子は顔の作り、身体つきが似通っているけれど、全く別の人格を持っています。才能があるか否かは自分をつくっている一部(=アイデンティティ)だし、才能を活かすかどうかは自分が選択すること。親であれ、他の誰かであれ、本人以外が決めることではありません。

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

 

今週のお題「おとうさん」