Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

家族のすれ違いの原因は、「家族像」の違いにありました

あなたは、年老いた親との同居をどうおもいますか。

育ててもらった恩を返すのは当たり前...かもしれないけれど、一度、家を出た後で、再び親と一緒に暮らすのは大変です。

 

中澤日菜子さんの『お父さんと伊藤さん』

ある日、彩が恋人と暮らすアパートに帰ると、父親が来ていて「しばらくここで暮らす」と一方的に宣言されます。次に会うのはお葬式の時だと思っていたのに。

彩34歳、恋人の伊藤さん54歳、お父さん74歳。二部屋しかないアパートで3人の同居生活が始まります。 

お父さんと伊藤さん (講談社文庫)

 

彩は、父親が何かと嫌味をいったり、説教くさくなったりするのにイライラし、父親の妙な自己流に振り回されます。「文明人ならウースター」と父親が言うので、中濃ソース派だったのにウースターソースを買うようになります。

このソースをめぐっては、バイト先の友だちと交わす会話が興味深いです。 

「彩ちゃんは中濃、お父さんはウスター。ひとつの家に、二つ違うソースが置いてあってもいいんじゃないかなあ。(後略)」

ひとつの家に二つのソース。その言葉を、頭の中でゆっくりと転がした。

「でもさ、そんなんだったら一緒に暮らす意味なくない?」 

彩の頭の中では、家族はひとつのソースを使うものとインプットされているから、「お父さんがうるさいからウスターソースも買うか」ではなく、「お父さんがうるさいからウスターソースに変えるか」になってしまいます。

家族は、相手に甘えがでるから傷つけあうのだなんて言うけれど、その甘えの正体は「自分が思うような家族になれ」なのです。

彩は、自分の家族像(家族はひとつのソースを使うもの)のために、自分の趣向 (中濃ソースが好き)を犠牲にして、ストレスを膨らませています。

私たちは、誰一人同じ人はいません。だから、親子のカタチ、家族のカタチはひとつではありません。それに、同じ家族になっても、まったく異なる家族像を思い描いていることも珍しくありません。お父さんとお兄さんと彩、みんなが少しずつ異なる家族像を持っています。

家族のカタチは、家族の数だけあるのだから、どちらかがどちらかに合わせるのではなくて、みんなが気持ちよくいられるカタチを見つけることはできないものでしょうか。

お父さんだって、例えば職場の人に「中濃ソースは悪魔のソースだ」とは言わないはず。家族には言ってもいいけれど、言うだけにして。

たぶん、許容範囲の分かれ目は、笑い話にできるかどうか。「うちのお父さんはこんなことを言うんだ~」と小ネタにしているうちはセーフ。「お父さんがこんなだから!!」と興奮してくるようならアウトです。

家族であることは止められないのだから、自分にぴったりの、かけがえのない家族を手に入れられたらいいなと思います。  

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。