Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

狭き門をくぐる才能とは何か

あなたは、子供の頃、大人になったら何になりたいと思っていましたか。

世の中には、気持ちの強さだけでは、努力だけではなれない職業、ほんの一握りの人しかなることのできない職業があります。

そんな狭き門をくぐるのには、どんな才能が必要なのでしょうか。 

 

恩田陸さんの『蜂蜜と遠雷』

芳ケ江国際ピアノコンクールは、新しい才能が現れるコンクールとして名高く、世界中から実力のある候補者が集まります。

オーディションに、著名な音楽家ホフマンの推薦状を持った16歳の少年、風間塵が現れ、審査員の間を緊張が走ります。師匠ホフマンの音楽スタイルを真っ向から否定するような型破りな演奏。これを認めてよいのか。コンクールは 審査員もまた、音楽性や人間性が試される場なのです。

コンクール予選に出場する候補者は100人。風間塵の他、華やかな貴公子のマサル・C・レヴィ・アナトール、母親の突然死でピアノが弾けなくなった天才少女の栄伝亜夜、音楽家としてのキャリアをかけて挑む最高齢候補者の高島赤石も参加します。はたして、コンクールを勝ち抜き栄誉をつかむのは誰でしょうか。

丁寧に紡がれた文章で、頭の中をコンクールの演奏が流れ出します。美しい小説です。

蜜蜂と遠雷 

ピアニストの卵たちは、子供時代の時間のほとんどを練習に当て、楽器代、楽譜代、レッスン代等々のコストをかけ、親の期待を一身に受けて、プロとなる日を夢見ています。

狭き門であるがゆえに、技量の高さだけでは選ばれず、斬新な何か、個性が求められますが、狭き門であるがゆえに、過去の成功例にとらわれ、冒険を避けて、個性から離れていきます。苦しいジレンマです。

ピアノの演奏を音楽ホールで聴いた風間塵が、この音符の群れを広いところに連れ出してやりたいと呟くと、ホフマンはこう言います。

そうだな、今の世の中は、少し窮屈だな。

(中略)

音楽を閉じ込めているのは、ホールや教会じゃない。人の意識だ。

綺麗な景色の屋外に連れ出した程度では、「本当に」音を連れ出したことにはならない。

コンクールの候補者たちは、型にはまらない風間塵の演奏を聴いて、自分の音楽を再発見します。

私たちは、失敗を恐れるあまり、あるべき姿を探し回ってしまうけれど、本当は、あるべき姿なんて、どこにもありません。正しいとか間違っているとか、そんな区別はないのです。

狭き門をくぐる才能は、自分の感性を信じ続ける力なのかもしれません。 

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。