Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

昨日の「普通」と今日の「普通」は同じではない

私たちは、「普通」や「平凡」は大多数や無難を指す言葉だと思っています。

でも、もしかしたら、私たちが思う「普通」で「平凡」なことは、他の人には時代遅れで奇妙に映っているかもしれません。「普通」や「平凡」の姿は、移り変わるのです。

  

角田光代さんの『笹の舟で海を渡る』

終戦から10年後、22歳の左織は、派手な美人の風美子に出会います。戦時の疎開先で一緒だったと言われますが、左織は思い出せません。

それ以来、社交的な風美子は、左織の生活圏に入り込んできて、左織が結婚すると、自分も左織の夫の弟と付き合い、義理の妹になってしまいます。やがて、風美子は料理研究家として華々しく活躍しますが、左織への連絡は絶やさず、左織の子供は風美子になつきます。

平凡な主婦の左織は、風美子の生き方に途惑い、また家族を取られるのではないかと脅えます。

戦後の復興の時代が変わりゆく中を生きた女性の半生が描かれた、読みごたえのある一冊です。やや重苦しい感があります。

笹の舟で海をわたる

左織と風美子の人生への姿勢は、対照的です。左織にとって運命は受け入れるものであり、時代には流されていくばかりです。一方、風美子にとって、運命は自分で切り開くものであり、果敢に時代に挑んでいきます。

左織が20代の頃は、左織の生き方が普通で、風美子は異端児であったのに、50代になる頃には、逆転しています。

時代が移り変わるとはいえ、ひとりの人生の中に収まる程度の時間で、これだけ生き方、考え方、価値観が変わりうることに驚きを覚えずにはいられません。

昨日の「普通」と今日の「普通」は、いつの間にか、同じではなくなっています。

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。