Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

人を追い詰めない「介護」の知恵とは

私たちが生活していく中では、やらなければならないことがありますね。食事を用意するとか、掃除をするとか。子供の世話をするとか、老いた親の介護をするとか。

自分がやること自体は納得していて、やるのも嫌ではないのに、やらなきゃいけないと考えた途端に、たまらなく息苦しくなるのは、なぜなのでしょうか。 

 

朝井まかてさんの『銀の猫』

お咲は、江戸の町で年寄りを世話する介抱人。贅沢好きの母親がこしらえた借金があって、女中奉公よりも稼げる介抱人になりました。老人とその身内の気持ちの行き違い、認知症老老介護、看取り。お咲の相手に寄り添う介抱が、介護の必要な老人を抱えて生き詰まった状況を動かしていきます。

今も昔も、介護は同じような問題を抱えていますが、江戸時代が舞台だからでしょうか、重苦しさはなく、しみじみと心温まる話です。銀の猫

孝行心や人の道を説くだけでは、当人と身内を追い詰めてしまう。もっと緩やかな、人を追い詰めない知恵はないだろうか。 『銀の猫』の後半では、介抱の指南書をつくる話が持ち上がります。 

人ひとりが寝ついたら、やはりその世話は生半可なことではない。

(中略)

しかもいかに手を尽くしても、いずれは日に日に弱り、汁も咽喉を通らなくなって衰え続ける。

ゆえに介抱をしている者は虚しくなるのだ。いっこうに恢復を見せない老親を見つめながら、報われない気持ちにとらわれる。

そして親もまた、思うようにならぬ我が身に苛立ち、子に気を使って息を潜めねばならない。互いの気持ちが行き違い、諍いにもなる。親子ともども追い詰められてしまう。

やがて、指南書は、「ああすべき、こうすべき」ではなく「こうしたら互いに楽になる」を目指すことに決まります。

「ああすべき、こうすべき」と考えると、やって当たり前という発想を招きます。出来なかったら、マイナスの評価になります。感謝の気持ちを打ち消していきます。「こうしたら互いに楽になる」と考えると、思いやりの気持ちが生まれます。

人を追い詰めない「介護」の知恵は、心持ちのあり方。心持ちが変わると、目の前の問題ややることが変わらなくとも、ずっと楽になります。

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。