Book In Life 迷子の本棚

テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています

家族が「家出」しました...

あなたは、家出をしたことがありますか。家出をした理由を覚えていますか。家に戻ったきっかけは、何だったでしょうか。

「家出」は、家族持ちの人だけができる贅沢です。一人暮らしでは、家に戻れば「旅行」、戻らないなら「引越し」になりますから、「家出」することはできません。

きょうは、家族の家出をテーマに紹介します。  

 

大山淳子さんの『分解日記 光二郎備忘ファイル』

主婦の二宮雪絵は、舅の光二郎にイライラしています。光二郎は、趣味の分解を始めると没頭して、何を言われても耳に入らなくなります。壊れた家電製品を修理してくれるのは有難いのですが、最近は、分解したことを忘れて散歩に出たり、かえって壊してしまう失敗が続いています。

ある夏の暑い日、雪絵は、光二郎がエアコンを分解中で冷房を入れられないことに気づいて爆発。光二郎は、亡き妻の遺影を抱えて家出します。

そして、家出した光二郎が公園で昼寝から目覚めると、足元に血まみれの男が倒れていて、手には血の付いたカマがあり、殺人容疑をかけられたから大変!! 

分解日記 光二郎備忘ファイル

分解日記 光二郎備忘ファイル

 

光二郎は「家出」の理由を表す言葉を見つけられず、『ただ、分解してみたかった』と言います。

機能が衰えたものを分解して、磨いて、再生する。

いつもそれができたときに、「よし!」と腹に力が入り、充実感がみなぎる

「家出」というのは、機能不全を起こした家族を再生する一つの方法なのかもしれません。

 

渡辺淳子さんの『東京近江寮食堂』

寺島妙子は、定年を目前に控えて、10年前に家出した夫を探しに東京に出てきます。落とした財布を拾ってくれた縁で、近江寮の管理人、鈴木安江と知り合い、近江寮の賄い婦になります。妙子は、夫が家出して以来、他人との関わりを避けてきたが、賄いや夫の探索を通じて、心を開いていきます。そして、妙子に訪れた心境の変化とは、どのようなものだったでしょうか。夫と再会できるのでしょうか。 

東京近江寮食堂 (光文社文庫)

東京近江寮食堂 (光文社文庫)

 

「家出」は、家出人だけでなく、残された家族にも影響があります。

「家出」は、何でも話せるはずの家族が、自然に話せなくなった時に起こります。つまり、家を出たのが問題ではなくて、問題があって苦しいから家を出たのです。

家出人が、今度こそ話そう、話せると思わなければ、家に帰れないように、残された家族も、同様の心境の変化がなければ、家出人を迎え入れられません。

焦っても仕方がないよ。目の前のごはんを大事にするんだ。目の前のことに集中するんだ。毎日を大切にすれば、想いのかなう日がきっとやってくる。がんばって生きていくんだ。

 これは、安江の義母のヨシ子が妙子にかけた言葉です。

家出人も、残された家族も、できることは同じ。毎日を大切に生きながら、焦らずに時期が熟すのを待つ、それだけです。

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。