Book In Life 迷子の本棚

読書で心を癒しましょう。テーマにあった本や映画の紹介と、その本や映画を通じて考えたことをアレコレ書いています。本に出てくるお料理の再現にも挑戦しています。

作品の中に飛び込んでみた!

あなたは、VR(ヴァーチャル・リアリティ)を体験されたことありますか。

私は、スキージャンプのVR体験をしたとき、ジャンプ台の高さに足がすくんで、尻もちをついてしまいました。 小説や映画、絵画作品の中に飛び込んだら、こんな風に感じるのかぁと思いました。

きょうは、作品の中に飛び込むをテーマに紹介します。

 

松尾由美さんの『おせっかい』 

古内繁は、雑誌に掲載された推理小説「おせっかい」を読んで、登場人物の一人、女刑事、郡上光に夢中になります。彼女の孤高の正義感が素晴らしい。そして、刑事の収入は仕事の危険に見合わないだろうと想像を広げ、不当だと憤りをおぼえます。

郡上光は、薄給の身で危険な犯人と対決している。作者は、郡上光の戦いを書斎に座って描写するだけで、彼女の収入をはるかに超える稼ぎを得ている。郡上光は、作者から不当に搾取されているのだ。 

その夜、繁は、夢の中で「おせっかい」の世界に入り込みます。初めは、なぜ小説の中に入ったのか戸惑いますが、次第に、なんとか郡上光に不当な事実を伝えて解放してやれないかと考えるようになります。一方、作者の橘香織は、自分の小説への侵入者に気づき、勝手にはさせないと決心します。はたして、繁は、郡上光に会って事態を変えることができるのでしょうか。 

おせっかい (新潮文庫)

おせっかい (新潮文庫)

 

 

繁は、橘香織に「小説が世の中を映し出すものであるから、登場人物は現実の一部。登場人物を粗末にするな」と訴えます。

作品に求められるリアリティを考えさせられる意見です。

小説は、作者の想像の世界であるとはいえ、好き放題な展開は許されません。例えば、魔法や不思議な力は、少し出てくる分には楽しいけれど、あまりたくさん出てくると嘘くさくて、面白くなくなります。

そう考えると、良い人ばかりが登場する癒し系ほっこり小説を楽しめるうちは、まだまだ、この世の中も捨てたものではないのだと思います。

 

宮部みゆきさんの『過ぎ去りし王国の城』

 中学生の尾垣真は、中世ヨーロッパの古城のデッサン画を拾います。不思議な絵だ。過ぎ去りし王国の城。置き去りにされ、忘れられた国の城。そんな言葉が浮かんできます。真がデッサンに顔を近づけると、風が吹いてきて、緑の匂いが感じられます。この絵の中には、別の世界がある。

やがて、真は、デッサンにアバターを描き込むことで、絵の中に入れることに気づきます。絵が上手な同級生、城田珠美に助けを借りて、絵の中を冒険すると、古城の尖塔に幼い女の子が閉じ込められています。助けてあげなくちゃ。

そこで、真と珠美がとった行動とは何だったでしょうか。そもそも、この不思議なデッサンは、誰が何のために描いたのでしょうか。 

過ぎ去りし王国の城 (角川文庫)

過ぎ去りし王国の城 (角川文庫)

 

 

珠美は、絵の中に入るのは危険だと言って、真を止めます。

絵に描かれたものには、作者の思いがこもる。その思いは願望かもしれないし、祝福かもしれないし、呪いかもしれない。 

 作品に込められた思いが伝わったら、それがヴァーチャルでなくなるときなのだと思います。 

 

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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。